ウィズコロナ・アフターコロナ時代の新しい製造業のかたち/セキュア・リモートメンテナンスとサイバーセキュリティ(第1回)


COVID-19の流行により、オンラインサービスの重要性・緊急性に変化の兆し

世界的な新型コロナウイルス感染拡大により、 不要不急の外出は禁止になり、現在あらゆるビジネスの現場が、「オンライン形態」へと見直さざるを得ない状況になっています。

一例として、社内ネットワーク外からのメール送受信や、基幹システムへアクセスを実現するVPN(仮想プライベートネットワーク)や、打合わせやそれに伴う移動を減らすためのオンライン会議システムの導入・拡充がますます必要になっていくでしょう。在宅業務にはシステム構築や拡充に一定の時間や費用を要することから、時間をかけながら徐々に導入が加速していくと想定されますが、対面での打ち合わせについては、その代替手段として初期投資を抑えつつ短時間での導入が可能なことから、一足先に、オンラインビデオ会議システムへ置き換えられ始めています。

4月18日付の日経新聞記事によると、ビデオ会議サービス「Zoom(ズーム)」の利用者数は、2020年1月時点では1日当たり1100万人だったところ、2か月後の3月には1日あたり2億人、そして更に4月には1日あたり3億人と、爆発的な利用者の増加がみられています。


オンラインサービスの実現に向けて乗り越えるべき、隠れたハードル

一方で、「現場で提供していたサービスのオンライン化」は、新たなツールを導入すれば解決できるような単純な話ではありません。潜在的にはニーズもソリューションもありつつも、今まで、具体的な導入事例があまり紹介されてこなかったことから想像できるように、導入し運用していくために、乗り越えるべき政治的障壁や心理的障壁が数多く存在し、大多数の企業で先送りにされ続けてきた事実があります。

誰でも簡単に導入できて一様に普及することが予見されるビデオ会議システムとは異なり、「現場サポートサービスのオンライン化」を実際に実現できるのは、その重要性と将来性を正しく認識し、時間と労力を投入して、実現に向けた課題をひとつひとつ地道にクリアできた一部の企業のみに限られます。そして、このサービスはのちに市場の中で大きな差別化ポイントとなり、顧客のニーズと相まって、大きく勢力を伸ばす原動力となるでしょう。


オンラインサービスを実現するB&Rのソリューション

B&Rの提供するセキュア・リモートメンテナンスは、「現場サポートサービスのオンライン化」の技術面での実現を支えるソリューションです。セキュア・リモートメンテナンスは、インターネット上に一時的にセキュアな通信を確立し、生産現場にある機械や装置への遠隔地からのアクセスを可能にします。 

これにより試運転・トラブル・定期メンテナンス等の際、エンジニアを現場へ派遣せずともマシンの横にいるときと同様のソフトサポートを、遠方の顧客に対して提供できるようになります。例えば、サポート依頼の電話を受けている最中でも、エンジニアが顧客先のマシンにアクセスし、現場に行かずとも詳細の診断や、トラブルシューティングを行うことも技術的に実現可能になります。

現場作業前後の移動がなくなれば、エンジニアが移動中にさらされるウイルス感染リスク、拡散リスクの抑えることができ、更に、移動に伴うコストも削減することが可能となります。顧客側の目線から見ても、サポートエンジニアの現場到着を待たずに状況の把握や、マシン復旧に向けての対応ができる可能性が生まれ、マシンの稼働率向上の余地が生まれるというメリットがあります。


オンラインサービスを実現するまでに踏むべきSTEP

この「技術的に可能」という事実は、サービス供給のために必要な要素のごく一部にすぎず、問題なく運用し続けるためには、その他にも、多くの事柄について、社内IT部門や・顧客をはじめとした多数のステークホルダーと議論を行い、コンセンサスを取った上で、運用ルールを策定し、契約に纏める必要があります。一例として、関係者と合意を取るべきポイントを列挙しています。

  1. リモートアクセス通信の仕様(安定性・通信速度)に関する顧客との認識の共有
  2. サイバーセキュリティに関する顧客との認識共有(セキュリティの基本概念、秘匿性維持が可能な条件)
  3. 提供するサービス仕様と条件に関する顧客との契約の締結(免責事項の確認)
  4. 顧客要求サービス提供に必要なサポート環境の構築(人員体制、情報共有ルール)

いかにして、セキュリティリスクと向き合うか

この中でも、最も調整に苦労するポイントは 2.いかにして通信の秘匿性、安全性を確保し、悪意ある外部ユーザーからの不正アクセスから生産装置を守るか。そして、その対策の有効性顧客に認めてもらい、エンジニアが業務を行う上で必要な十分なアクセス権限を確保する事です。 

サイバーセキュリティに関する前提知識のレベルが異なる様々な関係者すべてに対して、リスクとリターンに対する十分な理解と、納得をいただいたうえで、公正な契約を結ぶことは簡単ではありません。

利用者の爆増をご紹介した、ビデオ会議システム「ZOOM」は、世間での認知が急速に進んでいるこのタイミングで脆弱性の指摘が報じられました。(4月1日付日経新聞記事)これを受けて、情報の正確性有無にかかわらず、様々なメディアから様々な情報が飛び交っており、場合によっては、注目を集めるために必要以上に不安を煽る見出しで記事を公開していると思われているようなメディアも散見されます。

これらの世間の風潮により、顧客側での経営判断に多少の心理的な影響がある可能性こそありますが、専用ハードウェアを用いてリモートアクセスを実現する産業用リモートアクセスソリューションの場合、既に取得された認証そのものが保証する、「産業用途に耐えうるリモートアクセス通信の安全性」と、そのエビデンスとなる「安全性検証試験の結果」に揺るぎはありません。

B&Rの提供するセキュア・リモートメンテナンスは、ドイツの安全性機関(ProtectEM)による厳しい監査を経た結果として米国が定めるNIST SP900-115の枠組みで認証を取得した世界でもオンリーワンのリモートアクセスソリューションです。コロナウイルス感染拡大に伴う影響で制限がかかってしまっているビジネス活動、顧客サービス活動を加速させる一手として、B&Rのセキュア・リモートメンテナンスソリューションをご検討下さい。




<セキュア・リモートメンテナンス/取得した安全性認証の概要>


監査機関:PROTECTM社(ドイツ)
監査工程:NIST SP900-115(米国商務省傘下/米国標準技術研究所)
監査標準:BSI(ドイツ連邦情報セキュリティ局)、IEC62443-3-3、IEC62443-4-2


この連載について

本連載では、ウィズコロナ・アフターコロナの世界で必要不可欠なリモートメンテナンスと題し、リモートメンテナンス導入に伴って理解すべきサイバーセキュリティに関する情報をお届けします。具体的には、リモートメンテナンスソリューションを実現するハードウェア上、ソフトウェア上のシステム構成について、また、その中で通信の安全性を確保する仕組み、サイバーセキュリティに関するコンセプトやルールを策定するにあたって最低限必要な知識について、用語解説や全体像の情報を交えながら解説する予定です。

B&Rではセキュア・リモートメンテナンスを用いたリモートアクセスを試みる際の技術的なサポートに留まらず、本ソリューションを用いて、リモートメンテナンスサービス体制を考案し、構築、リリースする際のコンサルテーションも実施致しております。

本連載で取り上げてほしいトピックや、個別のお問い合わせに関するご相談は、
B&R営業担当、もしくは、office.jp@br-automation.comまでご連絡ください。